契約書をつくる理由
契約は当事者の合意があれば成立します。一方が契約を申し込み、他方がこれを了解すれば成立です。文書を取り交わすことは成立の条件ではありません。口約束でも契約は成立します。しかし、重要な内容を口約束だけで済ませてしまうと後で大きなトラブルになりかねません。契約書をつくるのは
- 契約内容を明確にして誤解や思い違いをなくし、トラブルを予防する
- 文書の形で残しておき、トラブルが発生したときに裁判などの証拠とする
ためです。最初からトラブルを起こして裁判をするために契約書をつくる人はほとんどいないでしょうが、トラブル予防のために事前に契約の内容を明確にしておき、正確な契約書をつくるということは非常に重要なことです。
契約書作成のポイント
契約は結ぶのも結ばないのも本人の自由ですし、誰と結ぶのかも自由です。そしてどのような内容をどのような形式で結ぶのかも自由です。これらは契約自由の原則と呼ばれます。民法は13種類の典型契約を定めていますが、これ以外にも従来なかったものや、複数の契約が混じり合ったものなど、さまざまな非典型契約が利用されています。
契約は原則として、申込と承諾という複数当事者の意思の合意であり、これによって権利(債権)と義務(債務)が発生します。そして契約の成立要件として当事者が存在すること、目的(物)が存在すること、当事者の意思表示が合致することが必要になります。しかし、成立した契約が法律上の効果を発生させるにはさらにいくつかの要件を押さえておく必要があります。
ありがちな問題として内容を確定させる作業を怠って、あいまいなまま契約してしまう危険が考えられます。金銭の場合は金額を記載すれば対象は確定しますが、物の場合は中古車や絵画のような他に代わりのないものなのか、工業製品のように同じものが多数あって数がそろえばよいものなのかを確認する必要があります。サービスのように形の無いものであれば、どのようなサービスなのかを分かるようにしなければなりません。その他に日付、物品授受や支払いの方法など、内容によって明確にすべきポイントが変わってきます。土地や建物などの不動産に関する契約では当事者以外の人に、その権利を主張するために登記が必要になるケースが多くなります。
最初に書いたように契約書が存在すること、というようなことは要件にはなっていません。しかし、誰と誰が何について、どのような合意をしたのかは口約束では時間の経過とともに当然あいまいになります。また、契約書を交わし、合意したと思っていてもトラブルの元になるポイントを押さえておかなければ後になって、これは違う、あれは違うという話になるでしょう。契約書を交わしたから問題は起きないとは考えず、問題が起きたときはどのように対処するのかも盛り込んでおくことが大事です。
当事務所の契約書作成事例
- 商品売買契約書
- 1回限りの商品売買に多い契約ですが、売買の対象物を特定すること、一定期間の品質を保証することなどをポイントに作成します。
- 継続的商品売買契約書
- 長期間に渡って繰り返し商品を売買する契約書です。事業者間の取引ではかなり多くの割合を占める契約です。将来のリスクも考慮した内容を検討します。物品などの実体のある取引の他にサービスなどの形のない役務も提供内容を明らかにして作成します。
- 代理店契約書
- 商品の販売代理店をイメージするかもしれませんが、インターネット上で提供するASPなどの顧客開拓をするために、運営会社が地域の企業などと代理店契約を締結するなど、新たな業種でも活用されています。
- 請負契約書
- 期日や金額など基本部分を定めて、細かなスケジュールなどは取引相手に任せてしまうイメージの契約です。請け負った側は仕事を完成させて引き渡す義務があり、建築工事や、ソフトウェア制作などで利用します。
- 委託契約書
- 業務の一部を引き受ける契約で、請負契約書と違って仕事完成を要件としません。さまざまな内容や条件を組み合わせて多様な取引に利用されています。一般的な契約書に似た内容が無い場合は、広い意味で委託契約に該当することが多く、当事務所も多くの作成依頼を頂きます。
- ソフトウェア・
インターネット関連
- 上記の契約書はソフトウェアの制作やインターネット上の取引でも利用されますが、重要なポイントとして著作権などの知的財産権の保護も必要になるケースが非常に多くなります。また、ASP、レベニューシェアなど新たな事業分野、契約方法の試みをされる方が多いのが、この分野の契約書の特徴といえます。